ただのそれだけ

同じ職場の彼女に声をかけてみた。
当時街にはアイドル歌手に因んだ髪型が流行していたが、彼女もそんな一人だったが不思議とそれが似合っていた。
口数が少なかったことが良かったのかも知れない。
この地方では有名なお嬢さん学校の生徒だったが、仕種は若い娘には少し似合わないくらい古風な印象だった。
何度か食事に誘ったが、丁寧に断られた。でも少しも気に障ることが無かったのは彼女の人柄からかもしれない。
仕事は普通にこなしていた。うまくも下手でもない。仕事に関しての彼女の記憶は特に無い。それだけ普通の娘だったということだろうか。
彼女目当ての客も何人かはいたようだが。別段それを気にするでもなく、私はテーブルを拭き、グラスを磨き続けていた。
仲間内でも誰かと特定親密に付き合っている様子は見られなかった。誰とでも気さくに口を利くから好感度で迎えられたのは間違いない。軽い女というわけは決してなかったが。
だが、私はそれを特にどうこう言う気にはなれなかった。
彼女自体が選択することなのだから。自分がその境界の外にいるだろうということは自覚していた。
やがて一年が過ぎ、短大生の彼女は店に来なくなった。私のいた店では人の出入りが激しかったから、やがて記憶から薄れていったのだ。
その後一度だけ街で見かけたことがある。男連れだった。でも意外なことに何の感情も浮かんでは来なかった。フルアクレフエッセンスの口コミがすごいらしい